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福島第一原子力発電所廃炉にかかる時間

下記記事によると、廃炉まで最低10年はかかるそうだ。

福島第1原発「廃炉に10年」 東芝がロードマップを提出(産経ニュース、2011.4.8 11:47)

 福島第1原子力発電所の原子炉を製造した東芝が米原子力企業3社と共同で、同原発1~4号機の廃炉に向けたロードマップ(工程表)を東京電力と経済産業省に提出したことが8日、分かった。今後5年をめどに原子炉圧力容器内の燃料棒や貯蔵プール内の使用済み燃料を撤去。10年後にはすべての機器や関連設備も撤去し、更地にする。


その後、海外の専門家によると廃炉まで最長100年かかる可能性があるという記事が出た。

「廃炉・除染に最長100年」 英科学誌に専門家ら(asahi.com、2011年4月13日11時41分)
 福島第一原発の廃炉や敷地の除染などには「数十年から100年かかる可能性がある」――。英科学誌ネイチャーは、11日付電子版で、米スリーマイル島(TMI)原子力発電所事故を経験した専門家らの見方を掲載した。

 記事によると、福島第一原発の建設の一部を請け負った東芝による「10年程度」という廃炉計画について、TMI処理の経験者は「福島第一原発でははるかに時間がかかるだろう」と述べている。原子炉が安定しておらず、さらに放射性物質が大量に放出される可能性も残っているからだ。


そこで、上記記事の元ネタと思われるネイチャーの記事(Fukushima set for epic clean-up(4月11日付電子版))の要約を紹介する。この記事では廃炉作業に必要な期間について詳しく述べられている。確かに10年では終わりそうにない。



福島第一原子力発電所には、約1000トンの核燃料と数千トンの放射性物質を含んだ汚染水があり、廃炉作業には大きな困難が伴うだろう、と原子力事故の専門家は指摘する。

廃炉には東芝の提案の10年よりずっと時間がかかるだろう。放射性物質の除去作業は複雑であり、さらにメルトダウンや爆発が起こっている場合にはさらに困難になる、とスリーマイル島原子力事故の処理に当った専門家は指摘する。

原子炉の状態が安定するまでは廃炉作業を開始できない。

ニューヨーク・タイムズ紙(3月26日付)にリークされた米国原子力規制委員会(NRC)の報告書によると、建屋の爆発により使用済み核燃料プールから放射性物質が飛び散ったとされる。またNRC当局者は、2号機のウラン核燃料の一部がステンレス鋼製の原子炉格納容器を突き破り、格納容器を囲むコンクリートの床に落ちた可能性があると考えている(日本政府はまだ発表していないが)。さらにその報告書では、原子炉内の水が十分循環していない可能性を指摘している。

まず最優先で原子炉内から漏れ出した汚染水の除去が必要である。スリーマイル島の事故ではセシウム137を含んだ数千トンの汚染水が原子炉の地下室に溜まった。汚染水をゼオライトフィルターに通すシステムを数ヶ月かかって構築した。ゼオライトでセシウムや他の放射性物質を除去され、きれいになった水を最終的には蒸発させた。福島第一原子力発電所でも同様にこのシステムでうまくいくだろう、とスリーマイル島原子力事故の廃炉作業に6年間携わったDeVineは指摘する。

原子炉自体の廃炉作業もさらなる難題を突きつける。瓦礫と高レベル放射線のため原子炉の損傷を調べることは不可能である。近い将来には建屋内をロボットで調査し内部の放射線量マップを作成する必要がある。とロボットの専門家Whittakerは指摘する。

原子炉内部を調査できるまでには数年はかかるだろう。スリーマイル島原子力事故では、放射線量が十分低下し、カメラを原子炉内部に下ろすことができるまで3年待つ必要があった。福島第一原子力発電所ではさらに時間がかかるだろう。福島第一原子力発電所で採用されている沸騰水型原子炉のステンレス鋼製の蓋を開けるには、燃料棒移動用クレーンが必要である。しかし、建屋の爆発によりこのクレーンは明らかにダメになっただろう、とDeVineは指摘する。原子炉内部を見るには別の方法が必要になるかもしれない。

沸騰水型原子炉の構造はまた別の問題を引き起こす。「沸騰水型原子炉では配管や弁などが密集している」ため、効率的に核燃料を除去するには原子炉の周りにクレーン用の建物を新たに建築する必要がある。「これは数カ月で出来る作業ではない」とDeVineは指摘する。さらにWittakerは、人間とロボットが作業を分担する必要があり「忍耐と粘り強さが必要」と指摘する。

廃炉作業は、スリーマイル島原子力事故よりもチェルノブイリ原子力事故のそれに近いものになる可能性が高い。チェルノブイリでは現在、総工費約10億ユーロ(約1200億円)の建造物(※)の基礎の着工を開始した。その建造物には自動クレーンが備え付けられており、最終的には現在チェルノブイリ原子力発電所を覆っているコンクリートと鉄でできた石棺を解体する事になるだろう。100年は持つとされるこの建造物の建設は2001年に決まり、完成は早くても2015年だろう。チェルノブイリ原子力発電所の廃炉作業は2065年(事故から80年後)まで予定されている。

当分の間、福島第一原子力発電所全体を中断(「密閉し100年待つ」)したほうがいいかもしれないと考える専門家もいる。しかし、今後数十年の間に日本を襲う可能性がある地震、津波、台風を考えると、「密閉しそのままにすることは非常にまずい選択」とDeVineは指摘する。




※訳注:石棺を取り囲むアーチ状の建造物(New Safe Confinementの事と思われる。
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