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福島第一原発事故による放射能汚染が子供に及ぼす影響

チェルノブイリ原発事故(1986年)による健康被害について書かれた記事「放射能汚染が未来の世代に及ぼす影響」(現代化学[2011年5月号])のコラムが興味深かったので紹介する。このコラムでは、放射性物質が子供たちへ及ぼす影響に関して、主にロシア語で書かれた文献が紹介されている。言葉の壁のためロシア語で書かれた文献の内容を知る機会は少ないため、このコラムで紹介されている内容は貴重である。このコラムから重要と思われる内容を紹介したい。

政府が強調する「ただちに健康に影響はない」という発言の意味するところがわかると思う。

注:この記事内では、セシウム濃度の単位がキュリー(Ci)/km2となっているが、このままでは分かりにくいのでベクレル(Bq)/m2に変換した。変換式は、1Ci=3.7×1010Bqを用いた。



①子供たちの全般的健康状態について


  • 健康な子どもの割合が減少:27.5%(1986~1987年)→8.3%(2000年)→7.2%(2004年)

  • 慢性的病気を抱えている子どもの割合が増加:8.4%(1986~1987年)→55.5%(2000年)→77.8%(2004年)

  • 障害児が増加

  • 甲状腺被曝量が2Gy(=シーベルト)以上、または体内被曝した子供では、健康な子どもは2.6~5.0%以下

  • 放射能汚染レベルの高い地域の妊婦では、出生率が低下(30~40%)。その背景としては、事故前に比べ、心臓循環器系疾患:2倍、腎臓疾患:3倍、甲状腺疾患:5倍、貧血:10倍。



②内分泌系、生態系の撹乱について


  • セシウム137汚染地域(3万~18万ベクレル/m2(=1~5Ci/km2))の20~25歳の出産未経験女性200人(事故当時12~17歳)を調査。セシウムの体内蓄積量は9.51~267.96ベクレル/Kg。生殖器官の代謝、構造、機能的変化、月経機能撹乱の頻度・程度は蓄積量と関係あり。

  • セシウム濃度が20万ベクレル/m2(=5.4Ci/km2)の地域に住む子供(事故当時:0~9歳)の9.2%に甲状腺自己免疫現象が見られた(汚染されていない地域では3.9%)。



③思春期に被ばくした影響について

事故当時、思春期であった男女およびその子供の健康状態に関する報告。居住地域の汚染度は、55万ベクレル/m2(=15Ci/km2)。

  • 思春期に被曝した女性の85%に婦人科的疾患あり。30%に慢性輸卵管炎、卵巣機能不全、子宮頚部びらんなどの病気あり。

  • 思春期に被曝した女性の65%で妊娠経過が病的(切迫流産:41%、腎症:25%)。なお、成人期に被曝した女性では切迫流産:13%、腎症:25%。

  • 思春期に被曝した女性の90%で出産が病的(早産、羊水過多、長時間無羊水状態、逆子、子宮内慢性低酸素状態、帝王切開など)。なお、成人期に被曝した女性では病的出産が65%。

  • 思春期に被曝した女性または男女から生まれた子供の64~73%は急性呼吸器系の病気をよくする。

  • 思春期に被曝した両親の子供の50%以上で、3つ以上の病気にかかっている。



④胎盤への放射性物質の蓄積と胎児への移行について


  • 汚染度:18万~51万ベクレル/m2(=5~14Ci/km2)の地域に住む女性のセシウム濃度。胎盤:6ベクレル/L(=164.6×10-12Ci/L)、母乳:11ベクレル/L(=3.02×10-10Ci/L)、尿:2446ベクレル/L(=661.3×10-10Ci/L)

  • 汚染度:55万~148万ベクレル/m2(=15~40Ci/km2)の地域に住む女性のセシウム濃度。胎盤:15ベクレル/L(=410.5×10-12Ci/L)、母乳:13ベクレル/L(=3.55×10-10Ci/L)、尿:2826ベクレル/L(=763.8×10-10Ci/L)





以上がコラムの内容である。

ここからは、福島第一原発事故で放出された放射性物質により同様の健康被害が起こるかどうか考えてみたい。

このコラムで報告されている調査対象地域の汚染度は、ざっと3万~50万ベクレル/m2である。
一方、文部科学省及び米国エネルギー省航空機による航空機モニタリングの測定結果[平成23年5月6日] によると、福島県の汚染度(セシウム137、セシウム134)は下図に示されているとおりである。
水色の地域の汚染度は30万~60万ベクレル/m2であるので、このコラムの調査対象地域の汚染度とほぼ等しい。水色の地域は30km圏外にも広がっているため、現在でも多くの人が汚染された地域で生活している。
一方、青色の地域の汚染度は30万ベクレル/m2未満であることしかわからないため、各市域の汚染度の詳細は不明である。地域によっては、このコラムと同じ程度に汚染されている所もあるだろう。

下図を見ればわかるように、現在でも多くの人が生活している地域でさえ、セシウムの蓄積量が高い。その結果、今後数年~十数年すると上のコラムで述べられているような健康被害が問題になってくると思われる。政府が繰り返し言う「ただちに健康に影響はない」の「ただちには~ない」とは、まさしくこのことである。

放射線の影響は、思春期までの子供により強く出てくる。これらの健康被害の可能性を避けるには、子供たちに対してだけでも集団疎開などの対策を講じる必要があるだろう。同様なことは妊婦にも言える。


図1:福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム137の地表面への蓄積量
福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム137の地表面への蓄積量



図2:福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム134,137の地表面への蓄積量の合計
福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム134,137の地表面への蓄積量の合計



参考文献:綿貫礼子、吉田由布子、放射能汚染が未来の世代に及ぼす影響、現代化学、2011年5月、pp.35-39.
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テーマ : 健康
ジャンル : ヘルス・ダイエット

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No title

大気圏核実験の時代に生まれて、公衆被曝した世代の疫学調査をしないのはなぜだろう?
やっぱりタブーなのだろうか。

No title

>大気圏核実験の時代に生まれて、公衆被曝した世代の疫学調査をしないのはなぜだろう?

きちんとは読んでいないのですが、海外の研究では幾つかあるようです。
北欧の研究(Trends in childhood leukaemia in the Nordic countries in relation to fallout from atmospheric nuclear weapons testing. BMJ. 1992 April 18; 304(6833): 1005–1009. )によると、大気圏核実験による放射性降下物により、1960年代には14歳以下の白血病が7%増加したらしいです。それ以外の期間に関しては白血病増加の明確な証拠はないようです。

別の研究(Thyroid cancer rates and 131I doses from Nevada atmospheric nuclear bomb tests、J Natl Cancer Inst. 1998 Nov 4;90(21):1654-60.)では、1950年代の米ネバダの核実験によるヨウ素131の被曝で、アメリカ人の1歳以下の子供で、甲状腺癌が増加したそうです。

詳細は各論文を参照してください。

日本人を対象にした疫学調査結果があるのか不明です。

詳細な情報ありがとうございます。

細橋様。
子供への影響が最大の心配事です。
大変、詳しく載せていただいて理解できました。
まず多くの人がチェルノブイリ事故のデータを事実ととらえて、今後の対策を立てることが重要ですね。

本記事を私のブログ(始めたばかりですが...)にリンクさせていただきました。
事後になりましたが、なにとぞご了承ください。
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