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「放射線で傷ついた遺伝子、子孫に伝わる」に対するクロワッサン誌の謝罪について

相変わらず、日本では科学的な事実に基づいた議論は難しいようだ。

「放射線で傷ついた遺伝子、子孫に伝わる」 クロワッサン「不適切」と謝罪(2011/7/ 1 18:39)

「放射線によって傷ついた遺伝子は、子孫に伝えられていきます」。表紙にこんなタイトルを掲げた生活情報誌「クロワッサン」に、ツイッターで批判が相次ぎ、クロワッサン側は、「不適切な表現だった」と公式サイトで謝罪した。
批判を呼んだタイトルは、生命科学者の柳澤桂子さんがインタビューで発言したものの一部を抜き出したものだ。柳澤さんは、三菱化成生命化学研究所の主任研究員を長く勤めた後、科学エッセイなどを執筆している。

このタイトルを掲げたクロワッサン誌2011年6月25日発売号の表紙が、発売元マガジンハウスの公式サイトにアップされると、ツイッター上で次々に指摘が上がった。
「クロワッサンの表紙 これはいけんやろ」「こんな言葉が書店に平積みされると思うと気持ちが暗くなる」「原爆の被爆者も正常に子を生している」…
いずれも、こうした表現が原発事故の被曝者らへの偏見を生むというものだ。

表紙のタイトル「放射線によって傷ついた遺伝子は、子孫に伝えられていきます」が不適切だそうだが、事実であるため問題ないはず。事実を伝えることにより対応が可能になり、結果的にこの発言にあるようなことを避けることが可能になる。もし、事実を伝えなければ、結局は手遅れになりこの発言が現実のことになってしまう。

誤解がないように書いておくと、タイトルの正確な意味は、放射線によって傷ついた親の生殖細胞(卵子または精粗細胞[精子のもとになる細胞])の遺伝子(後述するように正確にはDNA)は子孫(というか子供)に伝えられる、ということだろう。


クロワッサン側は、「不適切な表現だった」と公式サイトで謝罪(下記)したが、その必要はないと思う。うるさいからとりあえず謝罪しておく、ということだろうか。
クロワッサン808号に関する編集長からのおわびです。

(略)
被ばくされた方々及びその関係者の方々に対して不適切で配慮を欠いた表現がありました事を心からお詫び申し上げます。



そもそも記事に書かれているツイッターの指摘は的外れ。

・「クロワッサンの表紙 これはいけんやろ」
事実を書かずに嘘を書いたほうがいいのか、それとも放射線と遺伝子を関連付けた表現を表紙に書いてはいけないということだろうか。もしそうなら、日本では放射線と遺伝子について書かれた雑誌(含学術雑誌)や専門書は発行できない。

・「こんな言葉が書店に平積みされると思うと気持ちが暗くなる」
この人は本当のことより、気持ちが暗くならない嘘の方がいいと思っているのだろう。

・「原爆の被爆者も正常に子を生している」
そんなの当然。原爆の被爆者の全員が遺伝子に(健康に害のある)損傷を負ったわけではないし、遺伝子に少々傷(突然変異)があっても子孫は残せるし、その影響がでなければ問題はない。

もし、表紙のタイトルが「100ミリシーベルトまでの放射線は健康に害はありません」であれば、おそらくクロワッサン誌が謝罪することにはならなかっただろう。たとえ100mSvの放射線が安全でなかったとしても、このタイトルは人を安心させる効果が見込まれるからだ。今後、事実であっても、人々を不安にさせる雑誌記事が掲載されにくくなるのではないかと心配だ。


続けて上の記事では「いずれも、こうした表現が原発事故の被曝者らへの偏見を生むというものだ。」と書かれている。ツイッターで上記の発言をした人は、放射線によって傷ついた遺伝子を持っている原発事故の被曝者に対して、本音では偏見を持っていると言う事を告白していることに気付くべきだ。偏見を持つかもしれないという考えを内心持っているからこそ、柳澤さんの発言を偏見と結びつけてしまう。

この記事では続けて次のように書かれている。

これは発がんにもつながるが、柳澤さんは、こうも言うのだ。
「表面にはあらわれないDNAの傷が、子孫に伝えられていきます」
クロワッサン誌のタイトルは、この部分を抜き出したものだ。
とはいえ、柳澤さんは、すぐに影響するとは言っておらず、科学者らしく冷静な見方をしている。

「長い間にDNAの損傷が人類の遺伝子プールに蓄積され、何万年か後に突然変異が頻発するかもしれません。どのような変異なのかは予想もつきません。それが一番、恐ろしい」
そのうえで、柳澤桂子さんは、細胞分裂が盛んな乳幼児や妊婦は少しでも放射線を浴びないようにと呼びかけている。


この部分を読むと、 クロワッサンの編集者は柳澤さんの発言「表面にはあらわれないDNAの傷が、子孫に伝えられていきます」を、表紙に載せる際に「放射線によって傷ついた遺伝子は、子孫に伝えられていきます」と書き換えたと解釈できる。もしそうなら、「DNA」を「遺伝子」と置き換えた事になるが、DNAと遺伝子は同じでない(DNAの一部が遺伝子)し、DNAの損傷と遺伝子の損傷が健康に与える影響は全く異なる。要するに表紙の表現は柳澤さんの発言を正確に反映していないことになる。この点をクロワッサン誌が謝罪するなら理解できるのだが。

ちなみに、DNA≠遺伝子であることは生物学の教科書に書いてあるぐらい基本的事項。DNAの一部が遺伝子に相当し、それ以外の部分は特に役割のない塩基配列で埋められている(本当はもっと複雑だが)。たとえば、本ブログの記事「放射線のDNAへの影響(1)」では、チェルノブイリ原発事故のよる被ばくでDNAの一部であるミニサテライトの突然変異が親から子供に伝わることを示した論文を紹介した。ミニサテライトは遺伝子ではないため、ミニサテライトが子供に遺伝しても特に問題はない(現在までの知見では)。

この記事で最も重要な箇所は「細胞分裂が盛んな乳幼児や妊婦は少しでも放射線を浴びないように」という箇所だろう。今回のトラブルでこのメッセージが福島の人々に適切に伝わらないようなことが無い事を祈る。


冒頭に書いたように、日本では科学的な事実に基づいた議論は難しいようだ。このことが今回の福島第一原発の事故を引き起こした遠因であることにそろそろ気付くべき。
原発推進派の人々は、日本人の多くは科学的な思考が苦手であるということを知っているからこそ、原発を設置するために「原発は絶対安全で事故は起きない」という嘘をついたのだろう。絶対に事故が起きないことなど誰も保証できないことは原発推進派も同然分かっているはず。

もし、日本人が科学的思考に慣れているのであれば、原発を設置の説得をする際に、原発事故が起こる確率は何%であるが、それを上回るだけの便益が得られし、事故を未然に防ぐ対策や事故発生後の対応もするので、原発を作らせて下さいと言うことが可能になる。
このような考えに基づけば、万が一事故が発生した場合の対応マニュアルや関連する法律を事前に作る必要があるため、今回の原発事故で見られる行き当たりばったりな対応は避けられた可能性がある。
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テーマ : 宇宙・科学・技術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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