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今年(2011年)の夏はどれくらい熱中症が増加しているか、調べてみた

下記のニュースによると、今年の夏は熱中症が増加しているそうだ。本当に今年は熱中症が増加しているのか、そして、どの程度増加しているのか調べてみた。

熱中症:搬送5倍…1週間で4520人うち8人死亡(毎日新聞 2011年7月12日 22時15分)

 7月4日から10日までの1週間に熱中症で病院に搬送された人は前年同期の約5倍に当たる4520人に達し、うち8人が亡くなったことが12日、総務省消防庁の調査(速報値)で分かった。関東甲信や北陸で例年より早く梅雨が明けるなどして急激に気温が上昇したためとみられる。節電ムードで冷房使用を自粛する向きも多いが「エアコンや扇風機を上手に使うことで、熱中症を予防して」と呼び掛けている。

 速報値によると、都道府県別の搬送者数は愛知の403人がトップ。以下、埼玉の390人、東京378人、大阪257人、千葉県221人など。5月30日から7月10日の合計で人口10万人当たりでは愛知が18.94人で最高。和歌山の18.92人、三重の17.57人が続いた。死亡者は青森、群馬、埼玉、神奈川、長野、愛知、兵庫、山口の各1人。

本記事では、総務省消防庁のサイトで公開されている熱中症で救急搬送された人数のデータ[2008年(7月~9月)、2009年(7月~9月)、2010年(6月~9月)、2011年(6月~7月)]をもとに、熱中症発生件数(熱中症搬送人員数)を調べた。ただし、2011年7月だけは17日までの速報値を用いている。


■都道府県ごとの熱中症搬送人数

まず、都道府県ごとの熱中症発生件数のグラフを示す(下図、クリックすると図が拡大。以下同様)。ただし、この棒グラフは年月ごとの熱中症搬送人数を積み上げて作成しているの、その点に注意されたい。

確かに2011年7月17日時点で既に昨年同時期の熱中症搬送者数に迫る勢いであることがわかる。しかし、だからといって節電ムードのために今年だけ特に熱中症患者が増加したとは言えない。なぜなら、他の年より今年だけ気温が高い日が多いため熱中症が増加しただけかもしれないからだ。この点については、本記事の後半で調べる。
各都道府県・各年月の熱中症搬送人数の積み上げグラフ


上図を見ると、大都市圏で熱中症が多く発生していることがわかる。人口が多ければ熱中症の発生件数が増加するのはあたりまえだ。しかし、重要なのは熱中症発生率なので、人口10万人あたりの発生数を見る必要がある(下図)。

この図から、必ずしも大都市圏で熱中症発生率が高い訳ではないことがわかる。たとえば、東京都の熱中症搬送者数の実数は他県より多いが、人口10万人あたりの発生率で見ると、他県と比べて低いことがわかる。すなわち、熱中症に関して言えば東京は他道府県と比べて安全であると言える。逆に、高知県は熱中症発生数自体は少ないが、発生率はトップクラスである。一方、愛知県は熱中症の発生件数も多いが、発生率も高い。ただし、「愛知で熱中症の多い理由」によると、愛知県は熱中症の定義が若干異なるらしいので他県との単純な比較できないかもしれない。
heatshock-per100thou.png


次に、各月の東京都の人口10万人当たり熱中症搬送人数を1とした場合、他道府県はいくつになるか計算した(下図)。

全体的に見ると、東日本と比べて西日本の発生率が高い傾向にある。西日本の方が残暑が厳しいためなのかもしれない。なぜなら、9月の熱中症発生率は全般的に西日本の方が高く、その結果としてグラフが高くなっているため。
heatshock-vstokyo.png


最後に、全国の熱中症発生件数を時系列順に棒グラフにした(下図)。年によって発生件数が大きく異なることがわかる。おもにその年の暑さと関係あると考えられる。
heatshock-num-TS.png



■気温・暑さ指数(湿球黒球温度、WBGT指数)と熱中症発生件数との関係

前半では、都道府県ごとの熱中症発生件数を調べた。しかし、本当に今年は例年に比べて発生件数が増加したかどうかは明確ではない。気温が例年より高ければ熱中症が増えるのは当然だからである。
そこで、ここでは、気温・暑さ指数(湿球黒球温度、WBGT指数とも呼ばれる)と熱中症発生件数の関係について調べてみる。


・気温(東京)と全国の熱中症発生件数の関係

まず、平均気温(東京)と全国の熱中症発生件数の関係を示す(下図)。一つ一つの点が一日一日の全国での熱中症発生件数を表している。横軸は東京の平均気温、縦軸が熱中症発生件数で、かつ縦軸は対数軸であることに注意されたい。
ところで、都道府県ごとに気温は異なるため、東京の気温と全国の発生件数の関係をプロットすることはあまり意味が無いかもしれない。しかし、夏場の都道府県ごとの気温差は小さい(または相関が高い)と仮定すれば、各都道府県の気温を東京の気温で代表させることに問題はないと考えられる。

さて、このグラフから、気温が上昇すれば熱中症発生件数が増加するが、その増え方は温度に比例するのではなく、指数関数的(縦軸は対数軸なので)であることがわかる。すなわち、気温が高い領域ほど熱中症発生件数の増加スピートが高くなることを示している。

さらに、今年(ピンク色の点)は例年と比べて、たとえ気温が同じであっても、全般的に過去の年より熱中症発生件数が多い傾向であることがわかる。報道されている通り、今年は節電ムードのためクーラーを我慢したために、熱中症が増加しているのかもしれない。
heatshock-TTA2.png


上のグラフの縦軸は対数軸で実感がわきにくいので、代わりに普通の軸(スケール)でプロットすると次のグラフになる。前述したように、気温が高くなるほど増加ペースが加速することがわかる。
heatshock-TTA2-exp.png



・東京の暑さ指数(湿球黒球温度、WBGT指数)と東京の熱中症発生件数の関係

上では東京の平均気温と全国の熱中症発生件数の関係を調べたが、ここでは東京の暑さ指数と東京の熱中症発生件数の関係を調べる。

熱中症の発生件数は、気温が高くなれば増加するというほど単純なものではなく、湿度や輻射熱も発生件数に影響を与える。これらを考慮した指標が「暑さ指数」(Wikipedia, 環境省熱中症情報サイト)である。この指数は湿球黒球温度、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature)指数とも呼ばれる。

以上の理由から、以下では気温ではなく暑さ指数と熱中症発生件数の関係を調べる。なお、暑さ指数(推定値)のデータは環境省熱中症情報サイトから取得した。

まず、東京の暑さ指数(平均値)と推定熱中症発生件数を時系列グラフを示す(下図)。
heatshock-num-TS-tokyo.png


次に、東京の暑さ指数の平均値と東京の熱中症発生件数の関係をプロットしたグラフを示す(下図)。一つ一つの点が一日の東京の熱中症発生件数の推定値を表している。横軸は東京の平均暑さ指数、縦軸が熱中症発生件数で、かつ対数軸であることに注意されたい。
また、各年のデータをもとにした指数回帰式(とその式)も同時に描いている。

たしかに、暑さ指数が大きくなると熱中症の発生件数が増加することがわかる。
さらに今年(ピンク色の点)は例年と比べて、たとえ暑さ指数が同じであっても、全般的に過去の年より熱中症発生件数が多いことがわかる。報道されている通り、今年は節電ムードのためクーラーを我慢したため、熱中症が増加しているのかもしれない。
heatshock-WBGTT.png


上のグラフを通常スケールの縦軸で描き直すと下図になる。
heatshock-WBGTT-exp.png


○補足1

この記事では、気温として最高気温ではなく、平均気温を用いて調べている。下図と見ると、平均気温と最高気温のどちらを用いても、熱中症発生件数と気温の関係は大きく傾向が異ならないため、平均気温を用いても問題ないと判断した。
平均気温・最高気温と熱中症発生件数


○補足2
総務省消防庁 熱中症情報サイトでは、
  ・月別の各都道府県の熱中症搬送人数
  ・日別の全国の熱中症搬送人数
は公開されているが、日別かつ都道府県ごとの熱中症搬送人数は公表されていない。このままでは先に進めないため、東京の日別の搬送人数は次の式
  • X月Y日の東京での熱中症搬送人数=X月Y日の全国の熱中症搬送人数÷X月の全国の熱中症搬送人数×X月の東京の熱中症搬送人数

で求めることにした。そのため、東京の場合のみ「推定熱中症搬送人数」と推定という文字を本記事で付け加えている。ちなみに、この式で求めた値が十分な精度を持っているか確認できないため、この値を用いた箇所は参考程度に留める必要がある。


■暑さ指数と電力消費量の関係

ここでは、暑さ指数と電力消費量の関係を調べる。

暑さ指数の最大値と最大電力消費量をプロットしたグラフを示す(下図)。
このグラフより、暑さ指数が大きくなるについて電力消費量が増加することがわかる。すなわち、暑くなれば電力消費量が増加することを示している。
前年までのデータから、最大電力消費量の変動範囲は帯状であることがわかる。ところが、今年の最大電力消費量(ピンク色の点)のほとんどがこの帯の下限付近に分布している。これは、暑くなってもクーラーの使用を控えた結果、電力消費が例年と比べて低くなった結果かもしれない。もちろんこのデータのみからこのような因果関係を導くことはできないが、社会状況からこのように判断した。
wbgt-power.png



■暑さ指数と気温・湿度との関係

ここでは、暑さ指数と通常の気温・湿度との関係はどうなっているのか調べる。

暑さ指数は次の式で計算される(ここ、またはここを参照)。

  • 屋外:WBGT = 0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

  • 屋内:WBGT = 0.7×湿球温度+0.3×黒球温度



これらのパラメータは、すぐにはわからないし、出来れば気温と湿度だけから暑さ指数を求められれば便利である。

そこで、見方を変えて、環境省熱中症情報サイトで公表されている暑さ指数の推定値と気温・湿度との関係式(線形回帰式)を求めることができれば、簡易計算式として利用できるかもしれない。
しかし、これは邪道な方法であるため、正確な値は上記サイトで調べる必要がある。

で、結果を示すと、暑さ指数と気温・湿度との関係式は次の通りになる。なお、この式の、暑さ指数、気温、湿度は、それぞれ、東京の暑さ指数推定値(平均値)、東京の気温(平均値、°C)、東京の湿度(平均値、%)である。他の地域でもこの式が適用できるかは不明である(面倒なのでしていないだけだが)。

  • 暑さ指数=0.961×気温+0.098×湿度-8.500



この回帰式で求めた暑さ指数と環境省熱中症情報サイトで公表されている暑さ指数の推定値をプロット(下図)すると、この式で非常によく近似できていることがわかる(相関係数はほぼ1)。グラフの横軸は公表されている暑さ指数の推定値、縦軸は上記線形近似式で計算した暑さ指数。
wbgt-regression.png


参考サイト:

総務省消防庁 熱中症情報
環境省熱中症情報サイト
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ジャンル : 学問・文化・芸術

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