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ベクレルを重さ(グラム)に変換する方法



下記ニュースのように、福島産牛肉から放射性セシウム(2300ベクレル/Kg)が検出されたということで世間は大騒ぎしている。しかし、2300ベクレルが一体どの程度の量なのか、ほとんどの人は見当がつかないと思う。そこでこの記事では、ベクレルをグラムに変換し、その量をイメージすることを試みる。

福島産牛肉から放射性セシウム=規制値の5倍-東京都(2011/07/09-00:03)

 東京都は8日、福島県南相馬市産の牛肉から食品衛生法の暫定規制値(1キロ当たり500ベクレル)の約5倍に当たる2300ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。厚生労働省によると、食肉から規制値を超えるセシウムが検出されたのは初めて。福島県は同日、同市に対し出荷自粛を要請した。
 検出されたのは、南相馬市の緊急時避難準備区域内の農家から、都立芝浦と場に搬入された牛11頭のうちの1頭。残りの10頭は現在検査中。11頭分全ての食肉は都が保管しており、市場には流通していない。都は、同区域や計画的避難区域などから出荷される家畜の食肉検査に協力している。


ベクレルと質量の関係を表す式は
$$ \begin{align}
W=\frac{B \cdot T_{\frac{1}{2}} \cdot M}{N_A \log_e(2)}
\end{align}$$
である(式の詳細については参考文献を参照されたい)。
ここで、
$$ \begin{align}
W&:質量(g)\\
B&:ベクレル(s^{-1})\\
T_{\frac{1}{2}}&:半減期(s)\\
M&:質量数(g/mol)(放射性物質名の後ろに付いている数のこと)\\
N_A&:アボガドロ数(=6.022\times10^{23} mol)\\
\log_e(2)&:0.6931\\
\end{align}$$

この式を見ると、質量に最も大きな影響を与えるパラメータは半減期(秒)である。
二種類の放射性物質の質量数がほぼ同じであれば、ベクレル数が同じでも、その半減期が短いほど、含まれている放射性物質の重さは軽いことがわかる。これは、その放射性物質の原子の個数が少ないことと同じである。
また、これはベクレルの定義「1 s(秒)間に1つの原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量が1 ベクレル」からもわかる。これは原子の個数が少なくてもその半減期が短ければ、その放射性物質のベクレルは大きくなると言い換えることもできる。

それでは、この式を用いてニュース記事に出ていた2300ベクレルを質量(グラム)に変換してみる。放射性セシウムはセシウム137(質量数:137、半減期:30.17年=30.17×365×24×60×60秒=951,441,120秒)とすると、
$$ \begin{align}
W&=\frac{2300 \times 951441120 \times 137}{6.022\times10^{23} \times 0.6931}\\
&=7.18231 \times 10^{-10}
\end{align}$$
となる。すなわち、1Kgの牛肉に含まれている放射性セシウムは$7.18231 \times 10^{-10}$グラム=0.0000000007182グラムである。この値は実質的にはほとんどゼロに等しいと感じる。しかし世間では、たったこれだけのセシウムで大騒ぎをしているし、かつ、いかに放射性物質は極微量でも恐ろしい物質なのかがわかると思う。

しかし、この値はあまりにも小さ過ぎてどうも実感がわかない。より実感が湧く方法として、牛肉1Kgを25mプールに張った水に例えた場合、セシウム(赤色のインクに例えることにする)はどの程度の量になるか計算してみる。ここで、プールのサイズは小学校にある標準的なプール(25m×12m×1.2m)とする。なお、牛肉と水は全く異なるものであるが、そこは目をつぶって質量のみを考えている。

このプールが満杯になるまで水を入れると、その質量は360,000Kgとなる。上で求めたセシウムの質量に360,000をかければ、0.000259グラムとなる。これは一辺が0.637ミリの立方体の水の質量と同じである。霧雨の雨粒一個の直径は0.5ミリ以下なので、これとほぼ同じ量である。
すなわち、牛肉1Kgに2300ベクレルの放射性セシウムが含まれているとは、25mプールに、霧雨大の赤色インクを一滴垂らしたこと同じである。いかにセシウム2300ベクレルが僅かな量か、実感が湧くと思う。


参考として、1Kg当たりの物質(食物など)に含まれる放射性物質(ヨウ素131セシウム137ストロンチウム90)の量(ベクレル)とその質量の換算表を示しておく。ここで、「プール(g)」とは、前述したように1Kgを25メートルプールとみなしたとき、それに含まれる放射性物質の質量(g)、「立方体の一辺(ミリ)」とはその水(放射性物質に相当)が一辺当たり何ミリの立方体に相当するのか、を示した値である。ちなみに、表の「E-08」は小さい数値の指数表記であり、たとえば、1.23E-4=$1.23 \times 10^{-4}$=0.000123 である。

ベクレルと質量(g)の換算表
ベクレルヨウ素131(半減期:8.02日)セシウム137(半減期:30.17年)
質量(g)プール(g)立方体の一辺(ミリ)質量(g)プール(g)立方体の一辺(ミリ)
5001.08743E-133.91475E-080.0339548021.56137E-105.62094E-050.383062459
1,0002.17486E-137.82949E-080.042780373.12274E-100.0001124190.482628456
2,3005.00218E-131.80078E-070.056470357.18231E-100.0002585630.637072516
10,0002.17486E-127.82949E-070.0921675123.12274E-090.0011241881.039791487
100,0002.17486E-117.82949E-060.1985688863.12274E-080.0112418762.240162851
300,0006.52458E-112.34885E-050.2863858919.36823E-080.0337256273.230873909
77万テラ167.464140160287090.433921.101714240451.22688656244164844236.0662


ベクレルと質量(g)の換算表(ストロンチウム)
ベクレルストロンチウム90(半減期:28.9年)
質量(g)プール(g)立方体の一辺(ミリ)
5009.82541E-113.53715E-050.328259838
1,0001.96508E-107.0743E-050.41358148
2,3004.51969E-100.0001627090.545930085
10,0001.96508E-090.000707430.891034287
100,0001.96508E-080.0070742961.919675177
300,0005.89525E-080.0212228892.7686507
77万テラ151311.33825447208173837907.45758


これらの表に10万ベクレルと30万ベクレルを含めた理由であるが、これは福島県の人々が現在でも生活している地域の汚染量(平方メートル当たり)に相当する(下図参照)。これらの汚染地域では、放射性物質が原子一つ一つ均等に散らばっているわけではなく、ちり等に密集して付着していたり、福島第一原発から吹き飛ばされた放射性物質を多量に含んだ極小の瓦礫であると予想される。場合によってはその塵に付着している放射性物質が2300ベクレルを超える場合もあるだろう。そしてその塵は風が吹けば舞い上がり、子供達が呼吸するときに一緒に吸い込まれる可能性がある。これはその他のホットスポットでも同様だろう。


福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム137の地表面への蓄積量(文部科学省及び米国エネルギー省航空機による航空機モニタリングの測定結果[平成23年5月6日]
福島第一原子力発電所から80㎞圏内のセシウム137の地表面への蓄積量


また、上表の77万テラベクレルは、福島第一原発事故で放出された放射性物質の量である(チェルノブイリ原発事故で放出された放射性物質の量も参照)。
福島第一原発からは種々の放射性物質が撒き散らされたが、もしそれがすべてヨウ素131だったと仮定すると、その質量はたったの167グラムに過ぎない。
77万テラベクレル(=770,000,000,000,000,000ベクレル)と聞くと非常に大きく感じるため、数十Kgか数百Kgの放射性物質が放出されたように錯覚するが、重さに換算してみると、放出された放射性物質はとても少ないことがわかる(放出されたのがすべてヨウ素131だった場合だが)。このように、放射性物質の威力はわずかでも非常に大きいのでこれだけの量が四方八方に散らばれば多くの人々に有害な影響を与えるに十分な量である。

放射性物質を目に見えるくらい集めれば、そこからは大量の放射線が放たれる。放射性物質が目で見えた時点で、致死的な被曝による死を意味する。

参考文献:

川瀬雅也、あらためて放射性物質を復習しよう、化学 Vol.66 No.6(2011)
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テーマ : 宇宙・科学・技術
ジャンル : 学問・文化・芸術

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