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テレビの視聴率低下について考える(テレビ番組制作費減少と視聴率低下の関係)

苦境に立つテレビ業界(1):テレビ局の経営状況というコラムでは、キー局(日本テレビ・TBSなど)を取り巻く経済状況等を分析した後、テレビ局は次のような負のサイクル(①→②→③→④→①→…)に入ったと書かれていた。
 ①広告収入が減ると、テレビ局は利益確保のためにコスト削減に着手する。コスト削減でもっとも手っ取り早いのは番組制作費を削る事である。。
 ②番組制作費を削ると、当然のことながら、粗製乱造につながり、番組の質を低下させる。
 ③番組の質が低下すると、テレビ局の命とも言える視聴者が減り、視聴率が低下する。
 ④視聴率の低下は、スポンサー企業を益々テレビCMから遠ざけ、広告収入をさらに減少させる。こうして、テレビ局にとって、もっとも避けなければならない「負のサイクル」が完成してまうのである。


私は、この負のサイクル論とは異なり、次のようなテレビの衰退シナリオ(次のⅠ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳ)を考えている。
 Ⅰ.娯楽(インターネット・ゲーム等)の多様化・視聴者の多様化・少子高齢化
 Ⅱ.上記多様化に伴い、テレビの視聴時間が減少するため視聴率低下
 Ⅲ.視聴率が低下すれば、広告収入減少によりテレビ局の収益が悪化
 Ⅳ.収益悪化に伴い、番組制作費が減少(テレビ番組の低予算化)

私の衰退シナリオが、上で引用した負のサイクルと違う点は以下のとおりである。
 ・Ⅰを衰退の根本原因としている。
 ・テレビの衰退は、サイクル的ではなく直線的・一方向的に起こる。
 ・番組の制作費と番組の質とは無関係である(詳細は本記事の後半で述べる)。

Ⅰが続く限りはテレビに視聴率・収益・番組制作費は下がり続けていくだろうが、テレビを見る人が0になることはないのでいずれどこかで下げ止まるはずである。ただ、ここしばらくは視聴率は下げ続けると思われる。

■本記事の目的

このシナリオが成り立つことを示すには、Ⅰ→Ⅱ→Ⅲ→Ⅳの各ステップが成り立つことを示す必要があるが、これらは今後の課題とし、本記事ではⅡ→Ⅳ、すなわち視聴率低下→番組低予算化、が成り立つことを示そうと思う。

おそらく多くの人は、「視聴率低下→番組低予算化」ではなく、これとは逆の「番組低予算化→視聴率低下」が成り立つと考えるのではなかろうか。実際、以下に引用した両ブログとも番組低予算化が視聴率低下につながる趣旨のことを書かれているが、実際には因果関係が逆である可能性が高いことを示すことが本記事の目的である。
主要テレビ局の複数年に渡る視聴率推移をグラフ化してみる(Garbagenews.com)
ほぼ横ばいを維持していた視聴率も、2008年度上期を境に下落傾向に突入。そして2010年度上期(2010年4月~9月)には大きな下落の末、6%ぎりぎりのラインにまで落ち込んでいる。2008年度上期以降の下落傾向は、いわゆる金融不況に伴う予算不足が影響したものと思われるが、直近半年間の急カーブは説明が付きにくい。

2010年度(2011年3月期)の在京民放キー局の決算から見る番組制作費(longlowの日記)
元々どの時間帯も緩やかな減少傾向ではあったのですが、各局が番組制作費を大きく削減しだした2008年度以降、GH(19:00~22:000)、PT(19:00~23:00)もそうですが特に全日(6:00~24:00)の減少がかなり大きくなってきています。


■番組制作費と視聴率の関係

下のグラフは、番組制作費とゴールデンタイム(19:00~22:00)の視聴率(総世帯視聴率HUT)との関係図である。この図から視聴率は遅くとも1998年以降は一貫して下がり続けていることがわかる。一方、番組制作費(日本テレビとTBS)の制作費は2002年度から2007年度まではほぼ横ばいで推移しているが、2008年度下期以降はリーマンショックの影響で制作費が大きく削られている。
しかし、たとえリーマンショックが起きなかったとしても、テレビ離れによる視聴率低下は続いていたため、遅かれ早かれ(テレビ局の収入の多くを占める)テレビ広告費減少により制作費が削減されることは避けられなかったと思われる。
番組制作費とゴールデンタイムの視聴率(総世帯視聴率HUT)との関係


上の図からは番組制作費(日本テレビ・TBS)と視聴率HUTとどのような関係があるのか明確ではない。そこで、視聴率のグラフを半期単位で時間方向(横軸方向)にずらし、それと番組制作費との関係式を求めた。もし、時間をずらした視聴率と番組制作費の振る舞いが一致しているならば、両者の間には何らかの因果関係が成り立つ可能性があると考えられる。
このようにして両者間の関係式を求めたところ、番組制作費(日本テレビ・TBS)と5半期前の視聴率の振る舞いが似ていることが分かった(下図)。
この図の赤いラインは番組制作費である。青と緑のラインは視聴率HUTを5半期分右にずらしたグラフであり、その内の2011年度上期までの視聴率を青色に、それ以降を緑色に彩色した。
番組制作費(日本テレビ)と総世帯視聴率HUT[5半期前]の関係<br />

番組制作費(TBS)と総世帯視聴率HUT[5半期前]の関係<br />

5半期分右にずらした視聴率と番組制作費がよく一致しているということは、番組制作費は5半期前(2年半前)の視聴率の影響を受ける可能性が高いことを示唆している。

以上から、番組制作費が減少したために視聴率が低下したのではなく、視聴率が低下したから制作費が減少したと考えることができる。

もし、5半期前の視聴率が番組制作費に影響を与えるのであれば、4半期から今半期までの視聴率を基に、今後の制作費の動向を予想することができる。緑色のラインがその視聴率なので、制作費は今後も減少し続けると予想できる。


■テレビ番組の制作費とその質は関係あるのか

本当であれば、冒頭で述べた私のシナリオでⅤとして「制作費削減によるテレビ番組の質の低下」と書きたいところだが、番組の予算が削られたからといって番組の質が悪くなるとは必ずしも言えない。少ない予算でも、アイデアを絞り出し面白い企画の番組を制作すれば、質の高い番組作りは可能であろう。
制作費と番組の質は関係しないという例は沢山あると思われるが、最近の例では、ドラマ『家政婦のミタ』と『南極大陸』がある。『家政婦のミタ』が視聴率で『南極大陸』に圧勝の理由を分析する(NEWSポストセブン)によると
『家政婦のミタ』の瞬間視聴率が30%を超える一方で、10%台を右肩下がりで急降下中の『南極大陸』。同じく大物俳優を起用した2つのドラマが、これほど明暗をはっきり分けたのはなぜなのか。
(中略)
では制作費は?  極端な差がありそうです。

『南極大陸』はTBS開局60周年大型企画で、1本約1億円。かたやミタは、ロケもほとんど無く、3000万円程度と実に節約倹約型。

それなのに、視聴率はご存じのように残酷なほどくっきりと分かれています。『南極大陸』はぐんぐん右肩下がりで、10%台を急降下中。ミタは右肩上がりで30%台に届く勢い。(後略)


また、次のテレビの没落は番組の質の問題ではない(web memo.Ver2)で述べられているように、今のテレビ番組の質が昔の番組より低いとは必ずしも言えないだろう。
「酷くなった」「質が下がった」という前提が成り立つならば、逆に昔のTVは「質がよくて素晴らしかった」ということになるでしょう。そうでなければTV離れの説明になりません。
(中略)
TV番組に「これはひどい」という評価があるのは、別に今に始まったことではないでしょう。昔からTVは批判され続けているのです。最近はあまりないのかもしれませんが、一昔前は「PTAから苦情が来た」なんて話をしょっちゅう聞いた気がします。


番組の質を定量的に表すことは難しいが、感覚的に言うと、何時の時代でも、ほとんどのテレビ番組の質は基本的に低く、そのような番組をたくさん作る中から、質の高い番組が現れてくるのではないかと思う。

以上より、テレビの衰退にはテレビ番組の質はあまり寄与しないのではないかと思う。


■付録

◎番組制作費に影響をあたえる視聴率は5半期前の視聴率であるという根拠

日本テレビ・TBSそれぞれの番組制作費とd半期前の視聴率の関係を示す回帰直線を求め、その決定係数$R^2$を計算した(下図)。
tv-cost-r2-ntv.png

tv-cost-r2-tbs.png


この図を見ると、決定係数の傾向として、横軸の遅延d(d半期前を意味する)が正の方が、負の場合より全般的に高い。したがって、遅延dは正である可能性が高いと考えられる。遅延dがプラスということは、d半期前の視聴率と今半期の番組制作費の間に高い関連があることを意味している。一方、dがマイナスの場合(d半期先=-d半期前)は決定係数が低いため、d半期先の視聴率と番組制作費の関連は低い、すなわち、番組制作費が視聴率に影響を与える可能性は低い、と判断できる。

さらに決定係数が最大になるのはd=5のときであるため、番組制作費と最も関連があるのは5半期前の視聴率であると判断した。
ただし、厳密に言えば、TBSではd=1の場合に決定係数が最大になるが、d=5との差は小さいので、d=5とした。また、後述する全日の視聴率の場合でも、d=5のとき最も決定係数が高くなるので、総合的に言ってd=5が妥当であると判断した。

参考までに、d=0、すなわち、同時期の視聴率と番組制作費のグラフ、および、d=-1、すなわち、半期後の視聴率と番組制作費とのグラフを示す。d=-1(半期先=-1半期前)のケースは、番組制作費が半期後の視聴率に影響を及ぼすモデルであるが、このグラフで見ると比較的よく両者が連動しているように見える。しかし、上述したようにdがマイナスの範囲では全般的に決定係数が低くなるため、d=-1の可能性は低い、すなわち、番組制作費が視聴率に影響を与える可能性は低いと考えられる。
tv-cost-ntv+1.png

tv-cost-tbs+1.png

tv-cost-ntv.png

tv-cost-tbs.png



◎全日の視聴率(総世帯視聴率HUT)データを用いた場合の検討

これまではゴールデンタイム(19:00~22:00)の総世帯視聴率HUTを用いて分析してきたが、全日(6:00~24:00)のHUTを用いた場合でも同様の主張が可能なのか、調べてみた(下図)。
全日の視聴率データの場合でも、ゴールデンタイムと同様の傾向が見られるので詳しい説明は省略するが、全日の場合でも、番組制作費に影響をあたえるのは5半期前の視聴率であると言える。
番組制作費と全日視聴率(総世帯視聴率HUT)との関係

tv-cost-ntv-5-ed.png

tv-cost-tbs-5-ed.png

tv-cost-r2-ntv-ed.png

tv-cost-r2-tbs-ed.png

tv-cost-ntv+1-ed.png

tv-cost-tbs+1-ed.png

tv-cost-ntv-ed.png

tv-cost-tbs-ed.png



付記1:言うまでもなく番組制作費と視聴率の間の相関が高いからと言って、それらの間に因果関係が成り立つとは一般的には言えない。しかし、常識的に考えて両者の間には因果関係が成り立つと判断できるのではないかと思う。

付記2:決定係数の値は0.5~0.7であり、あまり高くない。本記事では番組制作費と視聴率の2変数のみを考えためであり、考慮する変数をもっと増やすことが必要かもしれない。

付記3:決定係数が高い範囲は-1以上であるということは、
 ・今半期以前の各半期の視聴率が番組制作費に影響を与える
 ・番組制作費が翌半期の視聴率に影響を与える
 ・番組制作費の影響は2半期先の視聴率にはあまり影響を与えない
と考えることもできる。

各データの出典は次の通り。

・HUTデータ:M1・F1総研の調査結果とHUTの推移をみて思ったこと(longlowの日記)
・日本テレビの制作費:日本テレビ決算説明会(配布資料)
・TBSの制作費:TBS決算説明会
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テーマ : TV
ジャンル : テレビ・ラジオ

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